現代社会において、わたしたちの身の回りはさまざまな広告で埋め尽くされており、無数の広告に囲まれて暮らしているといっても過言ではない。
その中でも、駅や電車、バス、タクシーといった交通機関を活用した「交通広告」は、特に都市部において高い注目度を誇るメディアとして近年では存在感を増している。とりわけスマートフォンの普及によりWEB広告が勢いを増す昨今において、リアルな接点を持つ交通広告の価値が見直されつつあるのだ。
交通広告を掲出するにあたり、いったいどのような企業が向いているのだろうか？
交通広告の特徴とは？
交通広告の最たる特徴は、わたしたちが日常生活において移動する中で「必ず目に入る」点にある。特に通勤・通学など、決まった時間・経路で行動する場合、反復的に繰り返しアプローチすることができるのは大きな強みと言える。満員電車でふと目を向ける中吊り広告や、待ち合わせをしていて目に入る駅の大型ポスターや看板広告などは、無意識のうちに記憶に残っているのではないだろうか？また、広告の種類も多彩で、駅構内のビジョン広告、ホームドアに貼られたステッカー、電車内ドア横のポスター、さらにはバス車内の放送広告までさまざまに形を変えてわたしたちの身の回りにあふれている。
向いている業種とは？
交通広告の掲出に向いている業種として、一般的に挙げられるのが「B to C（消費者向け）ビジネス」である。大別すると、次のような業種が交通広告との相性が良いとされている。
不動産業（特に新築マンション・建売住宅など）
駅近物件や新築分譲マンションの広告は、電車や駅構内でよく見かけるのではないだろうか？ターゲットであるファミリー層や単身者が通勤中に目にすることで、エリア認知や物件名の浸透を図ることが期待できる。教育関連（塾・予備校・通信教育など）
都心であれば中高生の電車通学は珍しくなく、また保護者が多く利用する路線での交通広告は、受験対策や進学支援サービスの知名度向上が期待される。とりわけバス広告との相性も良好であり、春や夏、冬といった各シーズンに合わせたキャンペーン展開もしやすい分野であると言える。エンタメ・コンテンツ業界（映画・ゲーム・書籍・音楽など）
話題性やビジュアルで訴求できるコンテンツを多く所有しているこの業界では、大型の駅ポスターやデジタルサイネージでインパクトのある広告を展開する手法が特に有効であると言える。この場合、SNSでの拡散を狙った相乗効果を前提とした戦略的プロモーションもまた大きな成果が期待できる。化粧品・美容・健康関連
都心部の女性向け路線を中心に、電車内ドア上のモニターで化粧品などのプロモーション映像が繰り返し流れているのに気づくだろう。また、駅構内のポスターでも美容系ブランドの広告が多く見られる。ビジュアルの訴求力に加え、繰り返しの接触によりブランド認知を深めることができるのだ。フィンテック・通信・アプリ関連サービス
新しいサービスやアプリは、ローンチに向けて短期間で認知を広げる必要があるため、交通広告による大規模露出での情報発信が効果的であるとされている。特に二次元コードや検索窓を用いた誘導施策は有効であり、相乗効果が期待されると言われている。
注目される中小企業の進出とは？
交通広告というと、「莫大な広告費が必要で、大企業しか出せないのでは？」というイメージが先入観として先行しているようだが、実態は必ずしもそうではない。たしかに、駅前の大型サイネージに長期間の広告を掲出する場合や、ターゲットとするエリアの沿線にポスターを打ち出すような大規模展開をする場合にはそれ相応のコストが発生するが、そういった類のものとは全く別で、オフィス最寄り駅の駅構内でポスターを1枠からでも出稿することが可能であるということをご存知だろうか？たとえば駅構内の看板広告を出す場合、それは駅ごとに掲載場所や広告のサイズによって費用プランが細分化されているため、地域密着型ビジネスを展開する中小企業でも、商圏エリアの主要駅を２～３駅に絞ることで限られた広告予算の範囲内で広告を掲出することが可能となる。また、広告デザインや印刷を外注することなく掲出物を自分たちで用意することができるならば、広告を掲出するのに必要な費用を大幅に抑えることができるのである。
実際に、地域の学習塾が地元駅の駅構内にポスターを掲出したり、歯科医院が最寄り駅のホームに広告を出したりといった事例は多く見られる。また、短期間・少数枠であっても、反復的な接触によって高い訴求効果が得られるため、費用対効果の観点でも十分検討に値する。
さらに最近では、交通広告専門の広告代理店が中小企業やスタートアップのサービスを支援する動きも見られるようになり、ますます交通広告が中小企業の身近な存在になってきたと言うことができるだろう。
もちろん企業規模に応じた広告戦略というのは、考えとして的を外すものではないだろう。しかし、広告とは本来その特性を十分に理解し、その目的に応じて最適な手段を選択するという采配が求められる。スタートアップのベンチャー企業が都心部のビジネス街で広告を掲出し、自社サービスの認知度を高め、リクルーティングに活用するようなケースがしばしば見受けられる。交通広告は、単なる販促だけにとどまるものでなく、「会社の存在を世の中に示す」ためのブランディングツールとしても活用することができるのである。
交通広告が次の選択肢になる理由
交通広告は、その接触頻度の高さや抜群の視認性、そして地域性を活かした展開が可能であるという点から、大中小さまざまなマーケティング戦略において最も魅力的なメディアの１つであると言えるだろう。もちろん、交通広告は短期的かつ一過性のものではなく、継続的な戦略の中でこそ真価を発揮する。だからこそ、どの路線で、どのエリアで、誰に届けるのかを明確にしたうえで、最適な設計に基づいて進めることが重要である。前述の通り、交通広告を専門に扱う広告代理店もあり、そこでサポートの手を借りて綿密な計画を立てるということも一考の余地があるだろう。大企業から中小企業、スタートアップまで、自社に最適な「交通広告のカタチ」を見つけることが、今後ますます重要になることだろう。
予算の壁を越えて、大きな信頼を得る。
交通広告は、中小企業の“本気”を世の中に伝える最短ルートとなるのだ。
