揺れる車内に訴求する“動くメディア”の力
中吊り広告とは、電車内の天井から吊り下げられた形で掲示される広告で、多くの場合は1車両あたり1〜2、3枚程度が設置されています。B3〜B2ほどのサイズで、横長の紙面が主流のものが主流となっています。その多くが乗客の視線の高さに位置するように設計されているため、自然と視野に入るようになり、多くの人の目に留まるということが特徴となっています。
扱われるテーマはさまざまで、週刊誌の見出し、化粧品や家電の販促、映画の宣伝、大学の入試情報、さらには政治的なメッセージまで幅広い情報が提供されています。
スマートフォンやSNSの普及によって、紙広告は軽視される傾向にあることは疑いようのない事実ではありますが、中吊り広告はその限りではありません。
むしろ「リアルな場でしか見られない情報」としての価値があるとしてその存在が見直されています。特にスマホを使えない状況(乗車率が110%前後になるような満員電車や、一部路線の地下鉄で発生する通信障害時)では、中吊り広告の情報が“唯一の暇つぶし”になることすらもあります。
このようなシチュエーションにおいて、見る人の心を惹きつけ、多くの人への訴求を目的とするために考え抜かれた中吊り広告が注目されています。
「ビビビビ!台湾号」とは?
京浜急行電鉄(京急)において、特別ラッピング列車「ビビビビ!台湾号」が2024年6月7日~9月28日まで運行されました。京急1000形の1025編成、1編成分がまるごとプロモーション車両として使用されました。
台湾観光庁と京急電鉄の協力で、羽田空港アクセスを担う京急線を活用した台湾の魅力発信および観光誘客促進が目的とされています。また、2024年4月に台湾で発生した地震への復興支援もその一環とされました。
「ビビビビ!」には、台湾の「美景(美しい景色)」「美人(人の良さ)」「美食(美味しい食)」「美質(質の良さ)」という4つの「美(ビ)」が込められています。
車体と車内が全面的に台湾の魅力でジャックされたデザインになっており、特に目を引くのは「台湾」の文字をあしらったビジュアルや、パイナップル・茶葉・蘭の花をモチーフにした中吊りポスターです。
さらに、窓上ポスターでは旅行代理店によるおすすめ観光名所(全51種類)、ドア横では航空会社による見どころPR(全30種類)など、多彩な広告展開がされることとなりました。
デジタル時代でも中吊り広告は生き残る
多くの場合、一見するとアナログで古臭いと思われがちな中吊り広告ですが、実は都市型生活者にとっては今もなお有効な情報チャネルであり続けています。その特異なフォーマットと公共空間での訴求力は、他のどの広告とも違う魅力を持っていると言えるでしょう。
ぜひ電車に乗った際には、何気なくそこに吊り下げられた広告に目を向けてみてください。そこには、メディアの歴史と考え抜かれた現代のアイディアとが交差する意外な発見があるかもしれません。
